西尾隆一

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更新日 2017-09-24 | 作成日 2008-05-26

第4回鑑賞教育フォーラム

ICT対話型鑑賞
 ~Webこども美術館の活用~

西尾 隆一

(熊本市立桜山中学校 )

1 プロローグ

 以前は年に数回、美術部員と一緒に美術館巡りをしていた。現在は卓球部顧問でままならないでいる。美術館までは遠くバスを乗り継いで行くため、ほぼ1日かけた行程となっている。お昼時は熊本城の二の丸公園でお弁当を食べるのが恒例行事となっていて、楽しい雰囲気の中、美術館での鑑賞を行っていた。彼らが特に興味を示すのは同世代が描いた絵で、お互いに感想を述べ合いながらとにかく何かを学び取ろうとする姿がみられる。私の方はというと、楽しみながら鑑賞する自分と、授業のヒントがないかと目を皿のように物色しているもう一人の自分がいて、何かと落ち着かないでいる。美術館見学の多くの機会を持ちたいが、遠いので一握りの生徒であるなら美術館へ共に行動できても、多くの生徒だったら難しいのが現状となっている。美術館から遠くに住んでいるとなかなか気軽に行くことはできない。生徒作品の展示会を「行かなくても気軽に見ることができればいいなあ」という気持ちがあり、時間と場所に制約されない美術作品の鑑賞ホームページを探した。当時はそこまで普及せずどうしようもなかった。あれば有用だという思いはあるものの、欲しいものは欲しかった。しかたないので自分でつくってみることにした。最初の1年は個人で細々と運営していたが、しばらくして熊本県図画工作・美術教育研究会の公式サイトに昇格し状況が一転した。県教育センターのサーバーをお借りできるようになり、作品画像の著作権をクリアしたのち、熊本県全域で行われている小中学校の版画展、デザイン展、絵画展をカバー可能となった。2年ほど活動した後、文部科学省委託・教育情報共有化促進モデル事業に指定を受け、いよいよ「Webこども美術館」のサイト作成に取りかかることとなった。 

2 鑑賞教育について

鑑賞教育で一人一人の子どもたちの変容を見つめることは、集団そのものを感じとることであり、すなわちよい授業づくりに繋がっていくと考えている。いつもこれでいいのかなぁと疑問を感じながら授業をつくっているが、この活動は自分を見つめ直すよい機機だと受け取っている。
 美術教育では、これまで創造表現を中心とした学習活動が展開されてきた。しかし、ここ2回の学習指導要領改訂においてようやく鑑賞指導の充実が重視され、表現と鑑賞の一体化が強調され問い直されつつある。鑑賞とは、一般的に表現されたものを受容し、味わうことであると思っていたが、ここにきて能動的な要素を多分に織り込んでいく必要性を感じ始めている。
 第一に、作品を進んで見たり、触れたり、感じたりすることで、そのよさや美しさを感じ取ること、想像力を働かせながら見方や感じ方を深め、感性を高める方法。
 第二に、作品に対して生徒が他の生徒への問いかけを設定し、お互いに質問や意見交換を交えて協議を重ね、文字と言葉で感じとりながら理解する力を深めていく方法が考えられる。
 生徒たちは自分なりの意味や価値をつくりだし、みんなの意見を集約してみると多用な価値観があることに気づくていく。作品などに対する思いや考えを説明し合うなどして,対象の見方や感じ方を広げることができる。鑑賞では協力して読み解く力を大切にしていきたい。

3 題材について

 鑑賞授業は指導者を主体としての授業展開が一般的だが、この実践は生徒が主体的に動いていく。鑑賞作品を班単位で学習し、班での意見交換を基に、それぞれの班が解釈した鑑賞作品のプレゼンテ-ションとディスカッションを全体で行う。生徒間の解釈を深めていくインターラクティブな活動がこの鑑賞の特徴である。ここで使う「Webこども美術館」は、インターネットを使って検索でき、学校の授業で自由に利用することを目的としてつくっている。そのコンテンツには、生徒作品の解説ナビ、分野別データベース、題材別データベース、世界の国及び地域別作品群などの多種多様なデータが収録されている。「Webこども美術館」を活用することにより、教師主導型の鑑賞から、対話型への鑑賞を試みた題材が「国境を駆ける鑑賞」「時を駆ける鑑賞」である。
「国境を駆ける鑑賞」とはWebこども美術館の外国の生徒作品を班単位で学習し、お互いの意見交換を基に、それぞれの班が解釈した鑑賞作品のプレゼンテ-ションを通して読み解く実践。
「時を駆ける鑑賞」とは校種間を越えて、中学校1年生が小学校1年生の作品を鑑賞し、作品を読み取っていくことにより、自分自身をその作品に投射しながら幼い頃に絵を描いた年齢まで遡り、そのときの原風景を甦らせようとする実践。

4 鑑賞の目標

①作品の発想や技法に関心を持ち、新しい発見を見つけようとする姿勢を持つことができる。
②対象をよく見て、その特徴を正しくとらえて言葉で表現できる。対象のよさや美しさを自分の感性でしっかりと受け止めることができる。
③IT機器の操作を理解し、目的を持った活用ができる。表現意図にあったプレゼンテーションを効果的に発表することができる。      
④作品のよさや美しさ、情感や雰囲気を感じ取り、言葉や文章にしてまとめることができる。
⑤作品の地域的・年齢的な背景を考え、作者の意図を話し合いながら意見交換できる。
⑥鑑賞を通して、そのよさや美しさを自分の感性でしっかりと受け止め、自分なりの意味や価値をつくりだしていくことができる。

5 鑑賞のながれと生徒の活動

コンピュータ教室は一人一台のパソコンを使えるが、机を自由に動かせないという制約があるため、班学習を行うには不便さが残る。本校は各教室にLANが整備されているので、どの教室でもインターネットを使った学習ができる環境にある。各教室のLANにコネクターケーブルを接続すれば、同時に複数台のノートパソコンでインターネットを閲覧することができるので、班学習を行うための自由な机の配置や、使い慣れた美術教室でITを使った授業をすることができる。
①各班でパソコンとLANケーブルを接続し、ネット環境を整える。
・慣れるまで時間がかかるが、各班にパソコン係をつくっておけばスムーズに動く。
②Webこども美術館にアクセスする。
・検索すると時間がかかるので、事前にお気に入りに登録しておくとよい。
③「世界の絵」コンテンツを立ち上げる。→「国境を駆ける鑑賞」
「絵画データベース(全学年表示)」コンテンツを立ち上げる。→「時を駆ける鑑賞」
・Webこども美術館には約1万点の作品があるので、別に1時間かけて自由に散策させてもよいだろう。
④43ヵ国の中から、班ごとにプレゼンしたい国を選ぶ。→「国境を駆ける鑑賞」
 小学校1年生グループから班ごとにプレゼンしたい国を選ぶ。→「時を駆ける鑑賞」
・班は4人ぐらいが望ましい。人数が多くなると画面に集中しにくくなる。
⑤選んだ中から、プレゼンしたい絵を2枚ほど選ぶ。
⑥作品のよさや美しさ、情感や雰囲気を感じ取り、発表できるようにワークシートにまとめる。
⑦鑑賞作品の地域的・年齢的な背景を考え、作者の意図を話し合いながら、プレゼンをつくる。
・プロジェクター上でインターネットを操作する。
⑧班ごとにプロジェクターを使ってプレゼンテーションをする。
⑨プレゼンテーターから他の班へ質問をする。
・ここからが重要。以下、指導のポイントに記述。
⑩プレゼンテーターの班を中心に生徒間でディスカッションを行う。

6 指導上のポイント・留意点

 プレゼンテーターから他の班へ質問が、この鑑賞授業のポイントとなる。作品解説を考えるうえで、国や年齢を超えた異なる文化の作品を扱うために、新しい発見やどうしても疑問に思うことが出てくる。その疑問を解くため、プレゼンテーターは全体に対して、いくつかの質問を用意する。はずした質問を用意すると教室が静まりかえるので、あらかじめ指導者からよい例・悪い例を提示することが大切。単なる知識の発表会ではないので、質疑応答を重ねながら他者の感じ方、考え方がお互いに深まってくるように、みんなの関心をひきながら深く考えさせるような質問を練れるように支援することが重要。慣れて盛り上がってくると、予想もしないような鋭い質問や珍解答が飛び出し、それぞれの感性でしっかりと受け止める授業に発展し、人の考えや感情を文字と言葉で感じ取っていく。指導者が解答を提示せず支援者に徹することにより、生徒たちが楽しく能動的に物事を幅広く見つめ、新鮮な心で感じ取り、想像力を働かせながら感じ方を深める授業が「国境を駆ける鑑賞」「時を駆ける鑑賞」となる。この学習は応用範囲が広く、様々な場面で活用することができる。失敗してもよいので、できるところから始めることが大切だろう。

7 授業研究会でのやりとり

○授業者自評

指導案の題材計画では3時間扱いだったが、生徒たちは内容をあまり知らないほうがよいと思ったため、今日が始めての授業(他校への飛び込み授業)となった。生徒たちが生き生きと発表してくれた。
本日はWebこども美術館というサイトを使った。パソコン室で授業するとよいのではという意見もあるが、美術室といういつもの雰囲気のところがよいと思ったので、ノートパソコンを使用した。今回の授業は、従来の鑑賞とは少し外れているかもしれないが、子どもたち同士で意見を交換しながら新しい発見をさせていこうと思っていた。教員はオブザーバーのような立場で聞いて、あるいはちょっとだけ意見を述べるようにした。子どもたち自身は、新しい発見をできたところもあれば、一時間で終わってしまったので深い読み込みまではできていないところもあるが、子供たちの多角的な考えを引き出す授業になれたならば、と思う。
先ほど司会から「時を駆ける鑑賞」についての紹介があったが、これは中学3年生に小学校1年生の絵を鑑賞させ、自分たちの子供のころの様々な思い、匂い、感覚などを思い出しながら鑑賞してもらおうというもの。ITは子どもたちは興味があるので、授業の導入として扱うことが多い。
助言者の先生が、授業中に「この絵は写真を見てかいたのかな?写真を見て描いたらこんな絵は描けないよね」と生徒に語りかけておられ、このような視点の与え方もあると参考になった。

○質疑および協議内容

(質問者) 授業の中で、「答えが仏像と限られたものになってしまうような質問はしないように」と制限をかけられたが、自分が中学生だったら、「質問に制限かけられたらいけない」と思い発想が止まってしまうのではと考えた。ストーリーを考えてみたり、班の中で意見を出し合って、意見が分かれたものを発表したり、というようなやり方もあると思うのでそういったやり方をされていたら知りたい。
また、鑑賞では、作者は何を思いながら描いたのかなどの答えが気になる。不明なままでよいのだろうか、子どもたちも答えを知りたいのではないか。
討論会のような形の授業は様々な教科でも行われているだろうが、この授業の形は「意欲」「知識」などの何につながるのだろうか?この後の展開はどうなるのだろうか、自己満足で終わってしまうのではないだろうか。これからつながっていく部分を知りたい。
(授業者)班で意見を述べ合うような授業もあるが、今回はWebを使う授業の形をとっているので、教師側から、作者について答えを提示する必要はないのではないかと考える。教師から答えを示すと子どもが「自分の考えは間違っていた。」と思い、発想がせばまってしまうのではないか。また、自分自身は、作品が作者からはなれた時点で見る側のものになる、と考えている。今回の目標が「自分なりの意味や価値を作り出していくこと、自分の感性でしっかり受け止めること」なので、いろいろ引き出すという意味でも、作者の答えは必要ない。また、物理的にも、Webこども美術館の上では、世界中からの作品なので作者がだれかわからない。知識やそれにつながるものについては、あまり考えていない。
(質問者)資料を見ていると、繰り返し「鑑賞を通して、よさや美しさを自分の感性でしっかり受け止め」というふうに書いてある。評価にも関わってくると思うが、どこまで生徒たちが捉えたら授業が成立したと考えているのか。
(授業者)どこまで捉えるとよいかという線は引いていない。しかし、班によってはうまくまとまらないところもある。そういう班が他の生徒の考え方、捉え方を知り、自分たちももう少し考えかたを深めると、他の人からおもしろい意見を引き出せるのではないかと考えてくれればいいと思う。深め方については、今日はまだ全部の班が発表できておらず、2、3時間目へとつながっていく。一つの作品についてもっと深く考察も、時間をかければできるのではないかと思う。
(司会)「鑑賞授業について答えは必要か」など鑑賞の授業におけるポイントがいくつか出てきている。そういう意見を踏まえながら他の質問等はないか。
(質問者)授業は今日が始めてということであるが、生徒の様子がとてもよかった。私たちは生徒たちと一緒に授業を作っていくので、生徒たちが一番の協力者だと思う。生徒の普段のクラスの雰囲気などを知りたい。また、鑑賞をこれからも進めていくということであったが、生徒が何からその作品を見ていくかというポイントや、作品を見るときの思い入れが見つけられるかどうかで、作品が好きになったりすると思う。そういった意味で、自分のものの見方で作品を見て語るやりかたの一つとして参考になった。
(授業者)この学校は、初めてなので雰囲気というのはわからない。一度あいさつにきただけである。しかし生徒はよく頑張ってくれたと思う。
(質問者)読解力をつける授業であった。ワークシートにしても、このように絵をみていったら見やすいよ、というような作品の見方を知ったのではないか。IT機器も生徒たちがすぐに使いこなしていて、自分もこのような授業をやってみたいと思った。
(授業者)読み取る手順について、ある絵を鑑賞して、「これは何だろう」ということになったことがある。台湾の作品であるが、ある部分を見た生徒の発言がきっかけで、他の生徒の見方も変わり、結果としてその作品は、台湾の台風を表したものであろう、ということになった。しかし、実際はどうなのかはわからなかったので台湾の学校のほうで調べてもらった結果、描いたのはだれかわからないが、台風を描いたものに間違いないということがわかった。このように一つの作品について深く読み取っていく、という授業もあるし、自分自身も答えを知りたいというところもあって、さらに読解する機会をもうけたい。
(質問者)対話による鑑賞にはいろいろあると思うが、今回は班の中で一度作品について意味づけをして、その班で作った意味を提示することで、聞き手はそこからスタートして考える授業の流れになっている。そこには授業者の先生のねらい「こんな力をつけたい」というがあると思う。今日の授業の流れ、授業の組み立て方について「自分たちの意味や価値を作り出す」という今日のねらいに向けて、この手立てがこういうところで効果がある、という先生の考えを伺いたい。また、生徒たちが自分なりの価値を見つけ出すということはどういうことなのか、指導者として価値をつくりだすということはどういう姿を目指しておこなっているのか、お聞きしたい。
(授業者)今まで多くの鑑賞の授業をしてきた中で、たくさんの失敗もしてきているが、例えば子どもたちに作品を選ばせたが、どうしても読み取りにくい作品というものもある。質問に制限をかけたのも、以前の授業の失敗から。短い時間の中でいろいろな考えを出させたいが、質問によっては授業がとまってしまう。段取りとして、話し合いの仕方も場合によっては教えていかなくてはならないし、授業を行う学年でやり方が変わったりする。また、授業の中でキーワードを入れたのは時間短縮のため。試行錯誤しながら段取りについて考えている。自分なりの価値を高めていくというところまでは到達していない。自分でもそのような授業を目指したい。
(司会)討議の柱として「新しい鑑賞の授業の創造」「これからの美術教育を考える」を挙げている。これらも踏まえて意見を出していただきたい。他にも今までに出てきた「子どもたちへの答え」「鑑賞の目的」「どんな作品を提示するか」というような事についても考えていきたい。さきほど「自分なりの価値」という事もあがったが、このことについてもう一度詳しく述べていただきたい。
・今日はいろんな意味を自分たちで考えて、自分なりの意見を出しながら活動をした。今日は生徒に「自分の価値を作り出す」ということを何度も投げかけられた。それについて、子どもたちはどう受け止めているのか、私たちは価値をつむぎだす姿をどう想定してどういう姿を目指していくといいのだろうか。自分の中でもすっきりと決着がついていないのだが、私たちはどのようなスタンスで指導すればよいのだろうか。価値と意味は違って、価値とはそこに自分なりの解釈、これは世の中にとって意味があるとか自分にとって心地よいとかの価値判断が含まれると思う。そういった意味で、どういった視点を持たせればよいのだろうか。
(授業者)生徒の感想を見る中で、「ひとつの絵を決めてそこからいろいろと考えていくのは難しいがいい経験になった」、「なぜこの絵がそうなったのか考えを試された」、「こういう見方があったのか」、など出ている。発表を聞いて、他の班の意見が違うという、いろいろなものの見方を身につけさせることが、価値につながっていくのではないか。
(司会)意見交換の時間に入りたい。授業自体も、例えば二班だけ発表して、後はその二つの作品についてという流れも考えられる。他にも何か意見があれば出していただきたい。
(質問者)インターネットを使った授業を避けてきていたが、今回の授業を見て、子供たちにどのような力がつくのかなどの参考になった。自分は授業の中で扱う作品は4枚ほどなので、この形の授業だとより多くの作品に触れることができると思う。また、自分の鑑賞の授業で大切にしているのは、子どもたち同士が受け入れていける授業であるが、今回の授業は友達同士の意見交換の場としても参考になった。友達同士の意見が多くなればなるほど、教師はさらに一歩引いた場所から見ていくことができる。
(司会)「教師も生徒同士も受け入れてくれる意見交換の場」というすばらしいキーワードが出た。
(質問者)中学校で鑑賞の大切さを感じ、現在は小学校でも鑑賞の機会をたくさん与えたいと思って取り組んでいる。小学校でシャガールの二作品を比較するという授業をした。おそらく中学校であれば「作者の思い」を焦点とするだろうが、指導要領を見ると小学校では「子どもたちの感じ方」が大切であるということで、それを相手に伝えていこうということにも取り組んでいる。一時間目に一つ、次の時間に一つ作品を見せて、物語を考えさせた。子どもたちは一生懸命考えて、今の子供たちの生活の背景、たとえば自分の家庭が離婚しているというようなことを投影したような答えが出てくる。それに対して、教師側からの価値とずれているとき、そのままでいいのだろうかと考えてしまう。
(質問者)机間指導の中で、「ベラルーシはどこですか」という生徒からの質問に「ロシアのほうですよ」という答えがあって、その瞬間生徒たちの顔がパッと変わった。そこ#で自分たちの気づきが詰まっていたのが、一つステップが上がったような顔だった。ロシアという国の近く、気候風土も違うという知識が、子どもたちの中で一つ広がりを持ったのではないか。知識については問わない、ということだったが、個人の気づきを班の中でそれぞれ話しをするとき、それは一人一人違う知識を基にしていることになる。もう少しベースになる知識を子どもたちに与えられれば、もっとイメージが膨らませられたのではないか。また、このWebの授業の中で、プレゼンテーションというのはどういう役割を持っているのだろうか。たとえば深めていく授業のところでも、最後の着地点としてそこで完結させるのだろうかという事も疑問に感じた。もうひとつは、読解力の解釈がまちまちであると思う。リーディングリテラシーなどともいうが共通の理解がまだできていないと思う。
(司会)美術の鑑賞の目的地というのがどういうところに来るのか、また子どもたちが知識を知りたいと思ったときなどのご意見をいただいた。
(質問者)個人の解釈でよいというが、可能な限り実際はどういうものであると伝えることで、新たな価値観に気づくことができるのでは。いろいろな細かいことに気づいていくことで作品の見方も深まる。
(授業者)知識は必要ないともいったが、やはり必要な知識もある。知識もいろいろとあって、子供たちの意見を高めるためにも、いろいろな知識をもとに新しいものを作っていくのは間違いない。
(司会)研究者はこういうことをいっているよ、というような答えもあると思う。一番初めに紹介した「時を駆ける鑑賞」で、中学生が小学生一年生の作品を見る授業では、そういった点で微妙なところもあった。また、答えがはっきりしないところでもあるが、鑑賞というもの、中学校では作者の思いを重点にというが、小学校から中学校にかけてどんな風に行くのだろうという、そのあたりは助言者の先生にも聞いてみたい。
(質問者)評価について悩んでいる。鑑賞の能力などに入ってくるのかと思う。最後の記入のところなどもあり、たくさん文章が書けるということになると国語力とも関わってくる。授業の中で非常にポイントとなるような質問や発言をした生徒や、話しながらうまくまとめられた生徒など、どのようにしたらよいのかなど考える。鑑賞のときに、評価をどのようにするのか。
(授業者) 自分も悩んだが、いくつか解決策を考えた。もちろんワークシートによる採点も大切であるが、自分は授業中いつもモバイルを携帯している。途中経過のところで、どんどんつけている。作品を作り上げる場合でも、最後に評価するのではなく、途中でつけるようにするとよいのではないか。
(司会) 私の場合は、教室の配置図を用意しておいて、それにさっと評価記録をしていっている。2学期でもかなり厚みが出るくらいに集まっている。

8 おわりに

 鑑賞作品を班単位で学習し、お互いの意見交換を基に、それぞれの班が解釈した鑑賞作品のプレゼンテ-ションを通して生徒間の解釈を深めることは、すなわち、他者の立場に立ち、同時に自分の価値意識をもって批評し合ったりする場として有効である。この鑑賞法では多くの学習者の見方・考え方が受け入れられ、それらを基に授業が展開され、単に知識や作品の定まった価値を学ぶだけの学習ではなく,知識なども活用しながら,様々な視点で思いを巡らせ,自分の中に新しい価値をつくりだす学習であることが理解できよう。作品を読み解く中で言語活動の充実を図っていく活動として今後も研究していきたい。

9 補足 「Webこども美術館」とは

「いつでも、どこでも、なんぼでも見られる図工・美術のホームページ」として、約1万点の作品を保管し、メイン・ターゲットを各教室からアクセスする「子どもたち」、サブ・ターゲットを授業のヒントを探す「先生」、各家庭からアクセスする「保護者」に設定し訪問者を待ち受けている。工夫点として、ダラダラとした数珠つなぎリンクにならないよう、1画面情報収集型のインターフェイスにこだわっている。小学1年から中学3年までの幅広い年令層で使え、ナビゲーション・ウインドウが連動するので、飽きることなく楽しく操作できるかと思う。また、視覚にともなう操作性のよさをプログラム制作の基本とした視覚重視型データベースを目指している。児童・生徒および指導者が使うにあたって、メイン画面からサブ画面、そしてサムネイル画面から一枚の作品へと一連の操作をスムーズにこなすことができる。

①作品解説ナビ
作品に込められた作者の心情や先生の思いにふれることができます。

・10月中旬、1日見学旅行で牧場に行きました。初めての乳牛を見て「大きいなあ。」「この牛のおっぱいから出るお乳が、毎日飲んでる牛乳なの。」「おっぱいさわるとあったかいね。」「よだれが出てる。」「優しい目だね。」とつぶやいていた事を思い出して描きました。

・悩んでいる自分を描くつもりで始めたが、描いていくうちにその悩みがひとつずつ、消えていくという不思議な思いを経験したそうだ。悩みを投げ捨てその先に見えるものに心を燃やしている。これが彼の最終的なテーマとなった。力強い表現だ。

・15歳、進路の決定を前にし、揺れ動く心をしっかり見つめ、自分自身の本当の姿を自分の手で表現したものです。本人の言葉によると"いやな自分、きついことから逃げてしまう自分”を表現したかったとあります。弱い自分と闘って描いた自画像です。

②分野別データベース
 小学校・中学校の作品を絵画、デザイン、版画の分野別・学年 別にそれぞれ保管しています。

③題材別データベース
 題材別に小学校15,中学校19のカテゴリーに分類・保管し ています。小学校のお薦めは「くさばな」「いきものとのふれあい」、中学校のお薦めは「人物」「風 景」「ポスター」です。

④世界の絵
 世界43ヶ国の児童・生徒の作品を保管している。国境を越えて様々な 文化を味わうことができる。

⑤先生の部屋
 実践事例を掲載している。クリックすると新しいホームページが立ち上がります。

⑥美術館散歩リンク
 国内外美術館のリンク集です。

⑦図工・美術全国大会「全国図画工作・美術教育研究大会 in熊本」の大会報告を見ることができます。

⑧動画コンテンツ 各種技法を動画で見ることができます。

⑨体育大会パネル展 体育大会のパネルを見ることができます。 

○ アクセス方法

LinkIconWebこども美術館 http://www.edu-c.pref.kumamoto.jp/ws/kmtartws/

LinkIcon英語バージョン http://www.edu-c.pref.kumamoto.jp/ws/kmtartws/english/index-e.html

「Webこども美術館」で検索するとWebこども美術館(文部科学省委託事業)でHITします。
生徒たちに検索させる場合、「こども」を「子ども」とすると違う所に飛びますので、くれぐれもお間違いのないようにお願いします。よろしければお気に入りに登録していただければ有り難いです。

10 エピローグ   ~ 手をつないでみませんか? ~

 点と点を結べば直線になり、直線と直線を結べばやがて平面ができあがります。学校に約一名ずつ配置されている私たち図工・美術の教員は、いわば点と点との存在であり、授業で出会う様々な課題を一人で背負い、解決していかねばならない宿命があります。問題解決の方法として、身近な人のアドバイスを受けたり、素晴らしい書籍に出会ったり、自分なりに突破口を発見したり、各種大会・各所属の団体で研修したり、インターネットで検索したり、といった様々な方法が考えられるわけですが、みなさん!もう一つの方法を試してみませんか?