津室 和彦

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更新日 2017-09-24 | 作成日 2008-05-26

第4回鑑賞教育フォーラム

けんびティーチャーズデーを通して
 ~山口県立美術館との連携~

 津室 和彦

(山口市立大内南小学校)

1 山口県立美術館の学校連携 

1 山口県立美術館「美術館学校連携推進事業」の内容 (平成18年度より)

  ■学校見学(学芸員解説)
  ■出前授業
  ■展覧会ガイドの制作・学校配布
  ■教員向け講座
  ■山口県造形教育研究会等との連携による学芸員派遣
  ■メーリングリスト

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2 授業づくりに関連して
  1で示した連携推進事業等の内、とくに私が授業づくりに活用したものを挙げる。
(1)
教員向け講座(現在は、けんびティーチャーズデーという名称になった)
県立美術館普及課の学芸員の企画により年間数回開かれる、県内の幼保・小・中・高校の教員が集う研修会。企画展に合わせ、学芸員のギャラリートークやその展覧会に関係のある識者の講演会、学芸員による収蔵品や常設展の解説や県立美術館の歴史や方向性のレクチャー、学芸員と教員の意見交換会、実技研修会などを行っている。その他は、地元の作家のアトリエ見学や鑑賞授業の指導案を持ち寄って話し合う会なども行ってきた。県内全ての国公立小・中学校に案内状が配布されると同時に、メーリングリストでも周知される。土曜日か日曜日に開催されるが、毎回20名~40名程度の参加者がある。
これらの研修会に参加する中で、鑑賞授業の構想を練ったり、美術館見学や出前授業の予定を具体的にしていったりするという、学校現場にとって大きなメリットを感じることができた。
(2)
県立美術館のボランティア研修の一つ、ギャラリートーク研修会
県立美術館のボランティアメンバーは、常設展や企画展の子供向けギャラリートークのナビゲーターをしている。それに先だって、ボランティアメンバーは、お互いにナビゲーター役とトーカー役に別れ、トーク研修を行っている。トークの研修の機会を求めていた私は、平成17年度、ボランティアの研修会に参加させてもらった。その当時は、学芸員があらかじめ用意しておいたスライド画像を用いて、メンバーの誰かがナビゲーターをし、その他のメンバーがトーカーとなって、実際にトークを体験するというものであった。その後は、ナビゲーターが自分で研修に用いる画像を探してくるということも取り入れた。ナビゲーターを経験できることは、得難いことであった。また、トーカーとしても、自分の考えが変容していく過程を実感でき、対話型鑑賞のよさを感じることができた。
(3)
出前授業にかかわる学芸員との検討
県内の各校種の教員が授業を構想する際、様々な面で、普及課の学芸員のサポートを受けるこ
とができる。授業案の検討はもちろんのこと、それ以外にも収蔵作品の画像データを借りること、
扱おうとしている作品に関連がある画像を探す際の相談にのってもらうこと、美術館の蔵書を閲
覧させてもらうことなどである。専門的な知識や豊富なトーク経験から、授業に臨む際に予想す
る子供の言動や留意点などのアドバイスを得ることもある。 
(4)
メーリングリスト
県内の学芸員と教員が参加しているメーリングリストASCOLTAがあり、交流の場となっている。「ティーチャーズデー」等美術館や文化施設のイベント案内や教員の自主研修会などの案内、また、展覧会の見学や出前授業・連携授業の振り返りや交流など、いろいろな使われ方をしている。

2 美術館と連携した授業実践

1 「みて かんがえて はなす ~アートでつながろう~」6年
《対話型鑑賞の題材化》

この題材では、以下の3つのことを試みた。
1つ目は、段階的に絵の見方を発展させていく経験ができることをねらい、4つの作品の配列を考えたこと。
2つ目は、話し合いによって鑑賞することのよさを客観的にも実感することをねらい、他者のトークを観察するという仕組みを取り入れたこと。
3つ目は、子供たちの話し合いの過程が生かされるまとめをすることで、鑑賞ガイドをつくり他学年の子供たちに見てもらうという方法を取り入れたこと。
全体の流れとしては、①で全員トークをした後、②③のどちらかを選択し、互いに選択しなかった方のトークを周りから客観的に見て、最後に④をまた全員トークで鑑賞し、選んだ作品の鑑賞ガイドをつくるというものである。
00.jpg(1)段階的に読み取りの経験を踏めるような作品配列の工夫
選択した作品と授業者が考えた特徴やよさ

①「透視」ルネ・マグリット 
「ルネ・マグリット展」図録(1994) 朝日新聞社より
○鑑賞者の心に「?」がともるような、不思議や謎がある
○謎から出発して、比較的、主題を考えていきやすい
○表現の自由さを感じる事ができる
○自分の考えを表明しやすい

②『にわか雨』ボワイ  
「ルーヴル美術館展」カタログ(2005)  ルーヴル美術館他より
○違いのある複数の人物が描かれている
○人物の表情やポーズ、衣装などに特徴がある
○人物の視線から人物間のやりとりを想像しやすい
○歴史的な背景などの情報により、考えやすくなる要素をもっている

③『スフィンクスの謎を解くオイディプス』アングル
「ルーヴル美術館展」カタログ(2005)  ルーヴル美術館他より
○人物の表情の対比や視線から、物語性を感じやすい
○人物の表情やポーズ、衣装などに特徴がある
○人物の視線から人物間のやりとりを想像しやすい
○歴史的な背景などの情報により、考えやすくなる要素をもっている
○適度な数の要素から、かいてあるものの意味を考えやすい

④『アトリエの芸術家』 ジェリコー(帰属)
「ルーヴル美術館展」カタログ (2005)  ルーヴル美術館他 より
○人物の表情は比較的読み取りにくい(適度な困難さ)
○人物のポーズ、衣装などに特徴がある
○人物の周囲にあるものに、象徴性が感じられる
○前時までの3作を見た経験が生かされると考えられる
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(2)他グループの話し合いを客観的に見る場を設け、話し合うことのよさを実感させる
『にわか雨』『スフィンクスの謎を解くオイディプス』については、さらっと見せた後、どちらで話し合いをしたいか選ぶようにさせた。そして、1グループがトークを行っている時、もう一つのグループのメンバーは、トークをしている子供たちの後ろから、その様子を観察する場を設けた。
  これは、話し合いによって作品の見取りや解釈が深まっていく様子を、少し客観的に見て再確認させたいという思いからである。友達とやりとりをして、互いに触発し合いながら絵を読み解いていく楽しさを、「やっぱり、みんなとみるっておもしろいな・・・。」と思って欲しいからである。

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(3)子供たちの話し合いの過程が生かされるまとめ ~鑑賞ガイドづくり~
友達と話し合って、解釈してきた4作品の中から1点を選び、他学年の子供たちにも紹介するという取り組みを行った。
 ただし、自分たちの解釈をただ盛り込むのではなく、鑑賞者自身が絵を読み解いていくための助けとなるような“ヒント”のようなかたちで示せないかと提案した。
グループ毎に、大判用紙程度のダンボールパネルに貼った作品画像に、マーカーで書き込みをしていった。毎時間トークをしながら用いてきた学習カードと似たような形式であったので、自分たちの書き込んだ学習カードを参考することも推奨した。グループの友達と相談しながら、鑑賞者に注目して欲しい部分を囲んだり矢印をつけたりして目立たせたり、ヒントとなるキーワードを用いて鑑賞者への問いを書いたりした。このガイドをつくる時に、小グループで今一度トークを行っているような感じもし、学級全体で話し合った時の友達の発言を引用したり、自分の考えを再度表明したりしている姿が、印象的であった。
できたパネルは、図工室に掲示し、訪れた他学年の児童が鑑賞できるようにした。もともと魅力的な作品であるが、ガイドにより、どの学年の児童も楽しみながら見ていた。

【鑑賞ガイドづくりと他学年児童がガイドを見る様子】
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2 「由一と若冲を比べてみよう」6年
《対話の活性化をめざす対比的な鑑賞》

山口県立美術館所蔵の高橋由一作『鴨図』をどう授業化するか考えた実践である。
美術館の学校連携の一環として、『鴨図』を用いた授業をして欲しいという提案が2007年11月のけんびティーチャーズデーにおいてなされた。この日、収蔵庫で鴨図を見、早稲田大学 河田明久先生の話を聞くという研修を経て、山口県内の小学校1校、中学校2校が学芸員をゲストティーチャーに迎えて授業を行った。本実践事例は、そのうちの小学校でのものである。
筆者は、『鴨図』単独で対話型鑑賞を行うことに、少々難しさを感じていた。そこで、鳥という子供にとって共通のモチーフのある伊藤若冲の『紫陽花双鶏図』と対比しながら鑑賞していく授業を構想した。対比的に見ていくことで、鑑賞の視点が広がったり深まったりすることを期待したものである。

(1)学習のねらい
『鴨図』『紫陽花双鶏図』を対比的に鑑賞しながら考えを伝え合うことを通して、表現様式の違いや洋画と日本画の特徴について、自分なりの解釈を述べることができるようにする。

(2)準備するもの
『鴨図』『紫陽花双鶏図』部分のパズル(A4程度) 2作品のグループ用画像(A3版)
 黒板掲示用画像 参考作品画像データ プロジェクター 
 ※使用画像出典 『鴨図』山口県立美術館 蔵 
『紫陽花双鶏図』京都国立博物館編『伊藤若冲大全』小学館、2002年 より

(3)授業のポイント
ア)パズル化した絵で、作品との出会いを演出
15.jpg『鴨図』と『紫陽花双鶏図』を対比的に提示し、子供たちの鑑賞意欲を高めたいと考えた。鴨図は静物画で要素が少ないため、小学生が画像ひとつで鑑賞すると話し合いが広がらないおそれがあると思ったから
である。
 そして、2つの絵をいきなり見せるのではなく、それぞれの絵をパズルにして渡した。
ピースの状態だと、まずは絵の色合いや筆のタッチなどを手がかりにして組み合わせを考えていくことになり、細部をじっくり見ることになる。このことは、絵の全体像を見るときの構えにもつながると考えたからである。          ピクチャ 8.jpg板書中央部分
イ)観点を探りながら対比的な鑑賞を促すはじめの感想を数人が述べたところ、すぐに「日本風」と「洋風」という対比的な見方が出てきた。そこで、比べる観点を中央に書き、左右に 
気づきを書いていくというワークシートの使い方を示した。
子供たちは、二つの絵を見比べる観点を相談して定めて改めて絵を見たり、逆に絵を見ていて気づいた違いを括る観点を相談したりしていた。
 観点を見つけるのがねらいではなかったのだが、学習カードに縛られてしまったところもあっ
たようで、この点は反省点である。


ピクチャ 9.jpg学習カード


ウ)対話型鑑賞をベースにした構えで話し合いをナビゲートする
      授業者として気をつけたのは、どんな発言も受容的に耳を傾け、必要であれば問い返した
り言い換えたり、他の子の発言と繋いだりすることである。通常対話型鑑賞では、一作品に
ついてじっくり話し合うことが多いですが、ナビゲーターとしての構えはどんな形態の鑑賞
学習でも大切だと考える。絵の意味は、鑑賞者が、鑑賞している仲間と一緒につくり出すの
だという構えである。

(4)授業をしてみて

○体験というフィルター
『鴨図』の鴨は、寝ているにしては不自然なので、死んでいるのではないかという考えを発表した児童がいた。実はこの児童、普段から飼育委員として学校で飼っている鴨の世話をしていたのである。人は、作品に触れたとき、自分の体験を下敷きにして思考するという原理に改めて触れた気がした。この発言は、「絵に描かれているのは、生きた動物に決まっている」という他の子供たちの先入観を大きく揺さぶり、全員の思考を更に促しました。

○グループ学習と全体の話し合いをつなぐことの大切さ
光の扱いに着目した児童は、グループで話し合った時に紫陽花双鶏図の陰影のない表現に気づき、「光ってるみたいには見えないけど、明るい」とワークシートに記述していた。どちらの絵も写実的だという感想は多かったのだが、この子は単なる写実ではない、陰影を表現しない紫陽花双鶏図の様式にも気づいていたようである。このような見方を全体の話し合いの中で拾い上げ広めることができれば、学級全体の解釈にもっと深まりを与えられたのではないかと思う。グループそれぞれの話し合いの成果を、学級全体の話し合いにつないでいく教師の意識と、きめ細やかな手立てが必要だと感じた。

○美術館との連携
二作品を対比的に見た後、由一と若冲の関連作品の画像を学芸員の解説と共に見る場を設定した。子供たちは自分たちが話し合った内容、すなわち由一の写実追究の姿勢や若冲の鶏をかっこよく見せる工夫などがひしひしと伝わってくる作品群に大変感銘を受けていた。授業後今一度画像を見ようと、学芸員の側に児童が集まってきたことがその現れではないだろうか。事前に子供たちの心にひびきそうな作品を厳選していただいた賜物だと思った。
 事前の教材研究では、由一と若冲を対比的に見せるという初めのアイデアからパズル化した導入の活動について、試作や実際に操作してみることなどを一緒に行う機会を得た。学芸員という専門的な立場での見方と、教員としての見方を摺り合わせることができ、授業を行う上で大変参考になった。さらに、グループ用と学級全体用のプリントした図版の作成も引き受けてもらえ、授業に向けての準備もスムーズに行えた。
また、『鴨図』『紫陽花双鶏図』について話し合った後、学芸員が用意してきた高橋由一と伊藤若冲の参考作品画像を見せてもらい、2人の作家を取り巻く状況やスタイルなどについて解説をしてもらった。このことを通して、子供たちは、自分たちが比較しながら話し合ったことが、それぞれの作家に対する興味をますます強くして、学習を終えることができたようである。

(5)児童のふり返りより

ピクチャ 10.jpg

○ なんだか右側(紫陽花…)は昔の絵ってかんじでいかにも日本人がかいているなーと思うけど左側(鴨図)は外人かなと思ったけど日本人でびっくりしました。
○ 由一さんの絵はとてもリアルで写真みたいだった。外国の絵が伝わってくるまで、どんな絵をかいていたのか知りたくなった。
○ ぼくは二人とも画家なんだけど、目標にしたものはちがうんだなと思いました。ぼくは絵には興味なかったけど、じっくり見るといろいろな発見があっておもしろいなと思いました。
○ 両方ともぜんぜん違う絵だけどリアルだなーと思ってビックリした。ほかの絵も見たけど由一さんの「たい」の絵はビックリした。絵を見てビックリするとは思わなかった。
○ この高橋由一さんは、たぶん本物のように見えるまで、絵をかいたんだと思います。伊藤若冲さんは、何か鶏が特別な生き物に見えたのではないかと思います。
○ 最初見たときすぐに和風って分かったけど「なんかちがうな」と思って「中国の絵をまねした」と聞いてびっくりしました。
○ 鴨の表情だけじゃなくて、周りにかいてあるものによって、作者の表したいことがよくでているんだなと思いました。

3「『羅漢図』のおもしろさを伝え合おう」5年
《二幅対の作品を学芸員と2人でナビゲートする》

 山口県立美術館収蔵の狩野芳崖作『羅漢図』をどう授業化するか考えた実践である。
 前年に行った『鴨図』授業(事例2)の中で、学芸員には、主に後半の関連作品解説をしてもらい、学習したことのよさや2人の作家についての印象を深めてもらうことができた。しかし、県立美術館の前田学芸員はナビゲーターとしても大変経験が豊富であり、授業の中で子供たちの話し合いを深めてもらえるはずであると、常々は考えていた。また、この度扱うことになったのが二幅対の作品であることから、学芸員と担任のが、一幅ずつナビゲートを行う部分のある授業の流れを構想した。
ピクチャ 11.jpg(1)学習のねらい
『羅漢図』の対になった二幅を見て、考えを伝え合うことを通して、羅漢の神秘性を表そうとしたであろう作者狩野芳崖の発想・構想や表現の工夫について、自分なりの解釈を述べることができるようにする。

(2)準備するもの
『羅漢図』一幅ずつのA0版印刷画像

(3)授業のポイント
ア)二幅のうち一幅を選んでグループトークをする
一幅をしっかり見て交流したふたつのグループ間で、互いに自分の側の絵について考えを発表し合いながら、二幅を対比的に見られるような授業の流れを仕組んだ。そのため、まずはどちらか一幅を選んだ十数人ずつのグループに別れ、学芸員と担任がそれぞれのグループのナビゲーターとなってトークを行った。
グループトークにあたっては、トークに入る前に、画像をプリントした学習カードに自分の考えを書き込んでいく一人学びの時間を取った。絵にかいてあるものとそれに対する感じや考えを学習カードに書き込み、自分なりのものをもって、話し合いに臨むようにさせるためである。
イ)二幅を全員で見ながら、2人のナビゲーターでトークする。
グループトークの後、全員が揃って、黒板に貼った大判画像と手元の学習カードを見ながら、二幅対でのトークを行った。
その際、全体の課題として、「自分たちが見た一幅の、見て欲しいところを伝え合おう」と投げかけた。そして、ナビゲートは、2人で行った。それぞれ受け持ったグループの児童が発言する際に、グループトークの内容を補足したり、言い換えたり、言い換えを促したりした。
また、トーク中の板書は、二幅の異同が明らかになるように、対比的に構成するように心がけた。

(4)指導案と板書

   指導案(略)

ピクチャ 13.jpg
ピクチャ 12.jpg

(5)授業のふり返りと課題

ア)二段階のトークは意欲を増しはしない
1時間の授業の中で、同じ絵について2度トークを行うという設定自体がいけなかった。子供たちは、自分たちの一幅を前にグループトークをした時点で、自分の言いたいことを表現してしまっているので、後半、改めて同じような内容を話す意欲は少なくなっていた。自分たちが話し合った内容を改めて相手グループに伝えるには、「伝えたい」「伝えなければならない」という意欲や必要感が無いとダメである。
 例えば、2グループそれぞれは、相手方の一幅は一切見ない場の設定をしておき、お互いに自分たちが見ている(見た)一幅にどんな絵が描かれているのかを伝え合うというような展開である。ちなみにこの展開は、同じティーチャーズデーの研修を受け、私と同様に『羅漢図』で授業を行った、下松市立末武中学校教諭 片山善則氏の実践である。(このような授業実践の交流にも、メーリングリストは活用されている。)このような仕組みをつくれば、グループ毎にトークした内容を、漏らさず伝えようとしたり受け止めようとしたりすることだろう。

イ)ナビゲーターのかかわり方が話し合いを大きく左右する
 もう一つ考えなければならない大きな問題は、子供たちへのナビゲーターのかかわり方である。一人学び的な学習カードへの書き込みやグループトークの際には、一人一人の考えがかなり細かく出てきていた。それにもかかわず、クラス全体のトークの際それらを引き出し絡めていくことができなかった。担任も学芸員も、教材となる作品について分析や背景等の研究をしていた。それでもやはり、その場で柔軟に対応できることが一番大切なのだと切実に思わされた。

ウ)複数のナビゲーターでトークを活性化できるのか?
 また、2人のナビゲーターが一緒にトークするということに関する問題も浮かび上がった。授業を構想した段階では、全体トークの際に2人のナビゲーターが、受け持ちグループの子供の発言をしっかりサポートしていければ、言わばかけあいのようなかたちで、全体トークが活性化すると考えていた。しかし、現実は、ナビゲーターは、互いに、相手グループの子供たちがどんな様子で、どんな発言をしたのかは知らないままに、全体トークを進めていかなければならないという大きなリスクがあったのである。
グループトークから全体トークという形を残してこの問題を克服するとすれば、例えば、授業を2時間で組むことが考えられる。1時間目は、それぞれグループトークをしっかり行い、日を変えて二幅を全体でトークするのである。そうすれば2人のナビゲーターは、相手グループの子供たちの様子や発言を学習カードから見取っておいたり、ナビゲーター同士でグループトークの様子や内容を情報交換しておいたりして、全体トークに備えることができるのではないだろうか。

3 美術館との連携の今後

 上記のように、山口県全体で、様々な形で美術館と学校現場の連携ができる基盤が整ってきている。19年度だけで、のべ1100人の児童生徒と420名の教員が連携事業で図画工作・美術の活動を行っている。中でも、同じ地域の作品を元にした授業実践が少しずつ授業のふり返りと課題
増え、かつそんな実践の交流がひろがりつつあるのが楽しみなところである。今後も交流しながら実践を重ねていきたい。