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更新日 2018-08-29 | 作成日 2018-07-27

「対話による鑑賞ガイドブック」Vol.2

中学校美術教師のための実践ガイドブック



ガイドブックを入手を希望される方は下記にご連絡ください。

発行所は光村図書出版株式会社(電話03-3493-2111)

「対話による鑑賞ガイドブック」について

ガイドブックの中から「はじめに」の部分を紹介します。


対話による鑑賞の授業がめざすもの(初版)

 教室に設えられたスクリーンを囲むように座る児童・生徒たち。プロジェクタから投影された美術作品の画像に目を向けながら活発な発言が交わされ,先生が取りまとめながら対話を進行する。このような授業風景が全国各地の学校で見られるようになってきました。
 変わったのは学校の授業だけではありません。作品解説が中心であった美術館のギャラリートークにも,観衆との対話を重視する傾向がみられます。

 およそ10年前,私たちが美術鑑賞の授業を学校の先生方といっしょに開発し始めたころと比べると隔世の感があります。
 私たちが取り組んでいる対話による美術鑑賞は,先生の説明を聞き,教えを請うのではなく,学習者が主体的に学ぶ授業です。
与えられた課題ではなく学習者が発見し関心をもった課題を全員で考え,共同で知識を構成していく授業。
教育方法としては目新しいものではなく,他の教科ではよく見られる方法ですが,美術の授業としてはこれまで根付いておらず,そういう点では画期的な状況が生まれているのです。
 美術作品にまつわる歴史や固有の情報を教えるのではなく,作品に対する自分の見方,感じ方や考え方を他者とコミュニケーションし,対話を通して個々の見方や価値意識を深めたり広げたりすること。これが私たちの進めている対話による鑑賞の狙いです。

 また,意見の交流を通して自己の相対化や他者理解が促される経験は,心の教育や人びとの相互理解が求められる昨今,極めて重要な教育的経験であると考えています。
言い換えれば,対話による鑑賞は,ただ美術そのものを理解するのではなく,美術を通してこの社会を豊かに生きる力を育てようとする,いわば美術を通しての人間形成をめざす教育方法なのです。
 対話による鑑賞の授業には筋書きがありせん。児童・生徒の柔軟な見方や自由な発想による発言は,教師の予測を越えています。自分の生活や経験をたどるような微笑ましい発言もあれば,人生や社会に対する深い洞察に驚かされることもあります。
 このガイドブックでは,そのような発言を導き出す授業の基本を簡潔に紹介していきます。

 対話による鑑賞は,実際に授業を行ってみないとその楽しさやよさが分かりにくいと思います。経験のない先生には懐疑的な方も多いようですが,まずは試みて下さい。「児童・生徒たちがこんなことを考えるとは思いもしなかった。」「児童・生徒によって作品の見方や感じ方が違うことや,一つの作品がさまざまに受け止められることに驚きました」などの声が,多くの先生から寄せられています。

 先ごろ高知市のある小学校で行われた授業では,ピカソの〈ゲルニカ〉について真っ先に発言した少年が対話のリーダーシップをとっていました。ふだんからもさぞかしと,授業のあと先生に尋ねてみたところ,驚いたことにその少年はふだんの授業では発言もせず目立たない存在だが,この鑑賞の授業のときは別人のように生き生きしているということでした。作品についての自分の見方という独自のものを語れる設定が,他の授業では埋もれがちだった彼の能力を引き出したのでしょうか。
児童・生徒は本来,自分の思いをみんなに伝えたい,自分の考えを聞いてもらいたいという願いをもっています。作品を見て話す,みんなで考えるという活動は,こうした学びの欲求にうまく合っていると私たちは考えています。きっかけさえあれば児童・生徒は語り出します。そして美術作品との出会いはそれを可能にするのです。

上野行一

2008年8月に「対話による鑑賞の授業」のガイドブックが発行されました。

上野 行一

全国各地で展開されるようになった「対話による鑑賞の授業」〜与えられた課題ではなく学習者が発見し関心をもった課題を全員で考え、共同で知識を構成していく授業。
 このような鑑賞授業がどの先生にもできるようにという願いをこめて、「対話による鑑賞授業ガイドブック」をつくることにしました。

 2008年6月15日までという期間限定で、この欄にガイドブックの原案を掲載していました。
 多くの方々のご意見をいただきながら、良いものをを作っていこうとする試みです。メールによる意見集約をし、最終的にガイドブックが完成しました。 

08年7月13日に、ガイドブック発行のめどがついたため、ここに掲載されていた膨大なデータはすべて削除しました。